マーケティングにおいて、分析する方法はいくつかあり、その分析方法の中でもっともよく使われる分析方法を3つ紹介します。
その3つの分析方法とは「SWOT分析」「PEST分析」「3C分析」です。
そして、その方法にはそれぞれ特徴があります。
それぞれの分析はバラバラではなく、一貫性を持って繋がっていて、全てを取得することによって自己の現況から戦術を見出すことが出来ます。
目次
SWOT分析とは その目的とは
まずは「SWOT分析」です。
SWOT分析とは、様々な業界問わず、幅広い分野の企業で活用できる分析です。また、自己分析にも使えます。
SWOTとは、下記の4つの言葉の頭文字を取って「SWOT」と形成されていて、その読み方はよく「スワット」と読みがちですが、正しいのは「スウォット」と読みます。
この「SWOT分析」には「内部環境」と「外部環境」とがあります。
「内部環境」とは、企業や個人によるそれぞれの努力によってコントロールすることができるものを指し、「強み」と「弱み」がこれにあたります。そして、「外部環境」とは、企業や個人によるそれぞれの努力によってコントロールすることができるものを指し、「機会」と「脅威」がこれにあたります。
上記の「強み」、「弱み」、「機会」、「脅威」という4つの項目を以下のような表に当てはめて分析をします。
SWOT分析の目的
続いて、SWOT分析の目的を説明します。
先ほど、SWOT分析は「様々な業界問わず、幅広い分野の企業で活用できる分析」と言いましたが、企業などで経営やマーケティングにおいて目標設定や方針を決定するために活用されます。
また、個人でも活用でき、現状の自分を理解し分析することができます。そして、改善策を打つことや今後の行動指針、目標を決める材料として活用できます。
企業においても個人においても改善、成長をする為に目標立てたり、方針を決めたりします。ただ、これを何も考えずただやみくもに計画を立てても効果はありません。そのためにSWOT分析を用い、現状を把握し、そこから最適な方針を決めたりや対策を立てたりしなければなりません。
SWOT分析の目的は企業や個人で最適な方針を見つける為に利用します。
SWOT分析の方法
それでは、SWOT分析はどのようにおこなえばいいかを具体的に説明していきます。
SWOT分析 基本方法:①目的は何か明確にする
SWOT分析をおこなうにあたり、やはり目標や目的など何もない状態でおこなっても意味がありません。まず、SWOT分析をおこなう目的を明確にする必要があります。
目的なく、情報を収集したり、分析をおこなってもその情報を活かすことができません。その為に、まずはどんな目標を達成したいのか、現状を知ってどうしたいのかなど、目的を明確にしましょう。
よって、はじめに目的意識を持つことが非常に重要になります。
SWOT分析 基本方法:②情報収集
次にSWOT分析をする為に情報を収集していきましょう。まずは「強み」、「弱み」、「機会」、「脅威」のそれぞれに関する情報を集める必要があります。
- 強み:自社が得意とすることや他社よりも優れている部分
- 弱み:自社が苦手とすることや他社よりも劣っている部分
- 機会:チャンスになる環境の変化や社会動向、自社の可能性
- 脅威:自社の弊害になったり、影響を及ぼしす環境変化や社会動向、競合他社の存在
主に外部要因となる「機会」「脅威」については自分たちの考えではなく、正しく情報を集めて把握する必要があります。
また、内部環境や外部環境の分析においては、「3C分析」や「PEST分析」というフレームワークを用いることもできます。
SWOT分析 基本方法:③テンプレートに書き出す
情報収集した内容をテンプレートに当てはめていきます。
まず、①で考えた目的に当てはまる重要な情報を書き出しましょう。ただ、今すぐ解消できるようなことや目的と明らかに外れている内容は避けて、関連性のある内容を書き出してください。
この時、注意することはモレなく書きだすことです。きちんとモレがないかチェックもしましょう。
SWOT分析 基本方法:④具体的な戦略へ
SWOT分析でテンプレートに当てはめただけでは状況を把握しただけにすぎません。この把握した情報を元に分析をおこない、具体的に経営戦略やマーケティング戦略に落とし込んでいきましょう。
方法としては、外部要因である「機会」「脅威」をよく考察して、それを内部環境の「強み」「弱み」に落とし込んでいきます。
ただ、これだけでは不十分であるため、今から説明する「クロスSWOT分析」にて具体的に分析ていきましょう。
クロスSWOT分析
それでは、クロスSWOT分析の説明をしていきます。クロスSWOT分析とは、外部環境と内部環境の特徴を掛け合わして分析し、戦略を立てていく方法です。
その戦略には4種類あります。
- SO戦略(強みと機会):内部の強みを活かし、外部の機会を活用する戦略
- ST戦略(強みと脅威):内部の強みを活かし、外部の脅威を克服する戦略
- WO戦略(弱みと機会):内部の弱みを克服し、外部の機会を活用する戦略
- WT戦略(弱みと脅威):内部の弱み克服し、外部の脅威を克服する戦略
上記の内容を「再開発が行われている駅に隣接するホテル」で例えると
SO戦略では好環境の中で強みを最大化する施策
- 強み:駅に隣接している
- 機会:再開発によって人足が増える
施策としては、例えば「再開発オープンフェアなどを計画し、駅構内などにあらかじめ告知をしておく」が考えられます。
ST戦略では強みをもとに脅威へ対処する施策
- 強み:駅に隣接している
- 脅威:再開発により競合が参入してくる
施策としては、例えば「他の競合より交通の便が良い事をあらかじめ商品化し告知をする」が考えられます。
WO戦略では弱みを補って機会を活かす施策
- 弱み:客室が狭いと苦情がある
- 機会:再開発によって人足が増える
施策としては、例えば「客数が増えることを見越して改築工事をして部屋を拡張する」が考えられます。
WT戦略では弱みと脅威を最小化する施策
- 弱み:客室が狭いと苦情がある
- 脅威:再開発により競合が参入してくる
施策としては、例えば「競合ホテルを調査し、部屋のアメニティを充実させて部屋の狭さをカバーする」が考えられます。
このように、それぞれ当てはめて考えていきあらゆる状況を分析し、対策を策定していきます。
以上がSWOT分析の説明です。続いて「PEST分析」について説明をしていきます。
PEST分析とは その目的とは
続いては、「PEST分析」です。
「PEST分析」とは、経営学者のフィリップ・コトラー氏がマーケティングにおけるビジネスフレームワークの1つで、自分たちを取り巻く環境(マクロ環境)を正確に捉えるために行う分析のことと提唱しています。
PEST分析の4つの切り口
PEST分析では、下記の4つの切り口で自分たちが属する、または、狙う市場に対して世の中の動きがどのように影響するのかを把握します。その4つの切り口の頭文字を使って「PEST(ペスト)」と言います。
- Political:政治的影響
- Economy:経済的影響
- Society:社会的影響
- Technology:技術的影響
それでは、早速それぞれを要素を上げていきます。
Political:政治的影響
政治的影響(Political)では、現在の法律や税制、政権、裁判制度などからどのような影響があるのかというのがポイントとなります。
・法律、法改正(規制・緩和) ・税制、減税、増税 ・裁判制度
・政治、政権交代 ・政治団体、デモ
今年(2019年)でいうと「10月に施行される消費税増税(8%→10%)」や2015年の「機能性表示食品制度の解禁」がこれに当てはまります。
Economy:経済的影響
経済的影響(Economy)では、日本国内または世界における経済の成長率や株価、金利、個人の消費行動などからどのような影響があるのかというのがポイントとなります。
・景気動向 ・経済成長率 ・物価
・為替、株価、金利、原油 ・消費動向
金融緩和を中心とした施策「アベノミクス」による影響や石油や小麦などの原材料をを取り扱って輸出している企業などであれば、毎日変動する為替相場によって売上や利益などによる影響がこれに当てはまります。
Society:社会的影響
社会的影響(Society)では、個人の消費行動やライフスタイルの変化、また社会構造などからどのような影響があるのかというのがポイントとなります。
・人口動態、密度、構成 ・流行、世論 ・世帯
・宗教、教育、言語 ・老齢人口、少子化
「オリンピック開催」や「外国人観光客の増加」、「少子高齢化」、「人手不足」などによる影響がこれにあたります。
Technology:技術的影響
技術的影響(technology)では、日々進化する技術面の発達などからどのような影響があるのかというのがポイントとなります。
・インフラ ・IT活用 ・イノベーション
・特許 ・新技術、技術開発
「IoTの普及(Internet of Things=インターネットにつながった商品)」、「AIの汎用化」、「RPA技術の向上」などによる影響がこれにあたります。
ホテル・飲食業界で考えるPEST分析(例)
上記の内容から政治的側面にて「2019年10月からの消費税増税(8%→10%)」を見たとき、増税前の「高額商品購入」や「国内外旅行」という経済的側面での消費者動向の変化が生まれると予測される。
店舗として、分析しなければいけないのは「軽減税率」に対するPOSシステム購入に対して、その費用対効果はどうなのか?ということがひとつ挙げられます。
技術的な側面からPOS関連の買い替えやシステム更新などが必要不可欠であるが、きちんと製品を見極めて購入することが重要である。
それはなぜかと言うと、社会的側面での人手不足問題などがある。その解決策には、自動精算機能があるPOSシステムの購入が必要だがその費用対効果も考える為に分析をしなければならない。
以上のように、4つの切り口から色々と仮説を立てて分析することが望ましいといえます。
最後に「3C分析」の解説をします。
3C分析とは その目的とは
「3C分析」とは、「Customer(市場・顧客)」、「Company(自社)」、「Competitor(競合)」という3つの「C」の頭文字を使用して3Cと言います。
「3C」の最終目的は、自分たちの事業が展開する環境下において、成功要因(KSF:Key Success Factor)を見つけ、経営やマーケティング活動に繋げることです。そして、その最終目的を達成するために、それぞれで目的が違います。
Customer(市場・顧客)
- 市場規模
- 市場成長性
- 収益性
Customer(市場・顧客)として、どの程度の市場規模があり、どの程度の成長性があるか、収益性はどうなるのかを見ます。例えば、市場規模が小さかったり、成長性が見込めなかったり、収益性が薄かったりすればそれを見切る必要もあります。
Company(自社)
- 自社の戦略との整合性
- 経営資源の有無
Company(自社)として、外部環境だけでなく、自分たちの従来の戦略との整合性、それを支えてきたヒト、モノ、ブランドなどの経営資源との整合性を検討する必要があります。例えば、今まで高級路線を売りにしてきたホテルが、急に市場拡大のために安売りを始めたら今まで築いてきたブランド自体が崩壊します。
Competitor(競合)
- 競合環境
Competitor(競合)として、どんな競合がどれくらいの数がいて、それは自分たちと比べてどの程度、優位性があるのかを確認する必要があります。例えば戦っている競合の多さや強さに対し考え、勝てる見込みがなければそのセグメントは諦めるという判断が生まれます。
3Cの手順
「3C分析」では、「業界の勝ちパターン」と「競合に勝つ方法」を見出す2つの目的が存在します。しかし、どの目的も成功要因(KSF:Key Success Factor)を見つけ出す必要があります。
「KSF」とは、例えば「オセロゲーム」だと「角を取ること」に値し、勝つために絶対に外せないポイントのことです。KSFを明らかにせず戦うことは、ルールを知らずに戦うのと同じことと言えます。
手順として、まず見るのは「Customer(市場・顧客)」です。一般的に市場環境だけを見てる例が多いですが、これではポイントは抑えられません。顧客の姿や購入に至るKBF(key Buying Factor=購買決定要因)をきちんと見て顧客像とそのニーズを見ていくことは必須です。また、KBFでは、きちんと「顧客視点」で考えて複数あればすべて出しましょう。
続いて、「Competitor(競合)」です。自分たちの業界においてKSFを見るときは、その業界で成功している企業(リーダー企業など)を見ましょう。シェアが高い企業や収益性の高い企業の動きから、どう顧客のニーズに満たし、どんなKSFをつかんでいるのかを明らかにします。
最後に、「Company(自社)」です。業界のKSFが明らかになったら、その現状の市場と顧客のニーズをどのくらい満たせているのかを観察します。そして、下記の3つの勝ちパターンのうち、自社が実現できるのはどれかを検討します。
- 現在の市場のKSFを踏襲し上回る
- 新たなKSFを構築し棲み分ける
- 現在のKSFを破壊し市場を刷新する
手順は「業界・市場と顧客」を見る→「競合」→「自社」の順番で「業界の勝ちパターン」と「競合に勝つ方法」を見出していきましょう。
まとめ
以上がマーケティングにおける代表的な分析方法の「SWOT分析」「PEST分析」「3C分析」を解説しました。
どれも有名なフレームワークです。このフレームワークを使いこなすには他のフレームワークと組み合わせて戦略を立てていく必要があります。上記で解説したことを参考に効果をだせるようにしていきましょう。